
嬉野温泉街に、老舗旅館「笹屋」跡があります。江戸時代に創業した笹屋でしたが、2000年に閉館されました。その建物は特徴的で存在感があり、シーボルトの湯がある通り「湯の端坂」のなかでも、目立つ存在です。
そんな老舗旅館笹屋でしたが、カフェに改装されて、オープンしたというのです。
- 大村屋・北川
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当時の「笹屋」がもつ雰囲気を残しながら、ノスタルジーのあるカフェに再生されて、人気を集めています。こうやって、嬉野の原風景が守られるのは、嬉しく思います。

いったい、どんなカフェなのか。お店へ行って、人気メニューを味わうのはもちろん、店主の宇田川さんにインタビューしました。
喫茶笹屋は嬉野温泉街の中心にある

嬉野温泉のシーボルトの湯のそばにある、湯の端坂。ここは、嬉野温泉の地元住民の中でも嬉野温泉らしい「原風景」と言えるような場所です。そんな温泉街にあったのが、旅館笹屋です。

そんな旅館笹屋の建物を生かしてつくったのが、喫茶笹屋です。

店内は、当時のノスタルジーを残しつつ、きれいにリノベーションされています。

建物跡とアンティーク調の家具の雰囲気が絶妙にマッチしています。このアンティーク調の家具は、店主の宇田川さんが集めていたものなのだそう。

もともと旅館のロビーだった空間ということもあり、店内は開放感があって広く、過ごしやすい空間になっています。

ちなみに席札は客室で使用されていた部屋名の札が使用されています。筆者が取材時に座った席は「高砂」でした。
喫茶笹屋のおすすめメニュー①季節限定のメニュー

喫茶笹屋で人気を集めているメニューが、季節限定のメニューです。冬季(10月〜4月)は白いぜんざい、夏季(6月中旬〜9月)は和のかき氷が提供されています。

今回は取材日が2月だったので「白いぜんざい」をいただきました。

白花豆、有機豆乳、きび砂糖さらに中秋の名月の塩を使用しています。やさしい甘さでホッとします。

セットは抹茶を選びました。白いぜんざいと抹茶がよく合います。
喫茶笹屋のおすすめメニュー②長崎名物 食べるミルクセーキ

店主の宇田川さんが長崎出身ということもあり、メニューにあるのが「食べるミルクセーキ」。
まろやかな卵と牛乳の風味を感じながら、シャーベットのようにシャクシャクといただけます。やさしい甘さで、どこか懐かしい味わいです。
喫茶笹屋のおすすめメニュー③大人の珈琲フラッペ

かき氷と香り豊かなコーヒーと練乳で楽しめる、大人の珈琲フラッペ。
すっきりとしたほろ苦いコーヒーと、練乳の甘みが調和する、爽やかなメニューです。暑い夏のひとやすみにおすすめです。
「旅館笹屋」の建物を守ることが開業の理由

喫茶笹屋は、もともとは旅館笹屋として2000年まで営業していた建物です。なぜ、わざわざこの古い建物を引き継いで、営業をスタートすることにしたのでしょうか。
- 編集長・大塚
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どうして、わざわざこんな古い旅館跡で喫茶店を開業したんですか?

- 宇田川さん
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嬉野の昔ながらの風景や文化を大切にしたいという想いからですね。歴史を大事にすることが、未来の豊かさを守ることにつながると思っています。

- 編集長・大塚
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なるほど。それほど、故郷への想いが強いんですね!

- 宇田川さん
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いえ、私の故郷は嬉野ではありません。長崎の佐世保です。


- 編集長・大塚
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そうだ。だから、メニューにミルクセーキがありましたもんね。えっ、じゃあ、なんでまた……

- 宇田川さん
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大人になって嬉野を訪れた時に、このまちの独特な雰囲気に惹かれました。古い日本の風情や芸妓さんの文化も大好き。古地図で昔の嬉野の街並みを覚えてしまうくらい、気に入っています。


- 編集長・大塚
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宇田川さんは、嬉野マニアなんですね。カフェをやりたかったというよりも、この建物を残したいという想いが先なのか。

- 宇田川さん
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カフェは、建物を残すための手段という意味合いが強いですね。以前、佐世保でカフェをやっていたことがあって、その経験を活かしています。

- 編集長・大塚
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あぁ、そうですよね。とても「建物を守る手段」というメニューのクオリティではないですもん。おいしすぎる。


- 宇田川さん
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ありがとうございます。当初は取り壊す予定だったんですが、なんとか熱意を伝えて、残してもらうようにできました。

建物に「旅館笹屋」の面影は残っているのか?

- 編集長・大塚
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お店になっている1階はロビーだったということですけど、客室もあるんですよね。普段は公開していない、客室を見ることは可能ですか?

- 宇田川さん
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いいですよ。今回は特別にお見せしましょう。

なんと、旅館の面影が残る客室を見せていただけることになりました。喫茶笹屋の横の路地に入り、歩みを進めると、建物の奥行きに驚きました。こんなに大きな建物だったのか……。

裏口の鍵を開け、中へ入ります。

畳が何畳も広がる、広いお座敷が出てきました。こちらは、もともと宴会場だったようです。

客室のある棟は増改築を重ねた影響か、廊下にも段差が多く、まるで迷路のように入り組んでいました。RPGでダンジョンを歩いているかのよう。
この空間の中に、これほどまでに客室があるものなのかと驚きました。こんなに密集して、たくさんのお部屋があったとは。

掛け軸や置き物なども、そのままの状態で残されており、まるで時が止まっているようです。

閉館した2000年当時のカレンダーがそのまま残っていました。20年以上、ずっと掛かりっぱなしのカレンダー。なんだか、切ないですね。

旅館の部分を歩いてみて、喫茶笹屋になっているロビーの部分が、この建物のほんの一部であることがよくわかりました。たしかに、ここは旅館だったんだなと実感することができると、建物に愛着が湧いてきます。
もともと、嬉野には小規模の温泉宿がたくさんありました。旅館笹屋もそんな、昔ながらの嬉野の温泉宿のひとつだったのです。

喫茶という新たな姿になって、新しい愛され方を始めた「笹屋」。ぜひあなたも足を運んでみて、受け継がれた歴史に参加してみてください。
今回紹介した暮らし観光
喫茶 笹屋
- 住所
- 佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙834
- 営業時間
- 平日:12:30~17:00(LO16:30)
土日祝:12:30~18:00(LO17:30) - 定休日
- 不定休(公式インスタをご確認ください)
- 公式サイト
- 公式サイト
- 公式Instagram
- @ureshino.sasaya
※掲載内容は、取材当時の情報であり、価格、営業時間、メニューなどは変更の可能性があります。現地でご確認ください。